新たな水平線を探しに

正月と誕生日とにしか更新しないブログ_(:3」∠)_

◆自然は、驚きに満ちている。

 

 今回、僕が読んだ本は――

『これが物理学だ! マサチューセッツ工科大学「感動」講義』

 著:ウォルター・ルーウィン、訳:東江あがりえ一紀

です。

 

これが物理学だ! マサチューセッツ工科大学「感動」講義

これが物理学だ! マサチューセッツ工科大学「感動」講義

 

 

 全米屈指の名門校、マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology : MIT*1)の教授が書いた本。

 原題は、『For the Love of Physics』。直訳すると「物理学への愛のために」。

 けっこうこの名の通りの本で、物理学のことをみんなに好きになってもらおうという感じで書かれている。

 「物理」と聞いて、顔をしかめる人がほとんどだと思いますが、この本は、そんな人たちのためにあるようなもの。

 書のなかで、ルーウィン教授は、こう書いています。

わたしが教室で教える目的、そしてこの本を書いたおもな理由は、わたしと同じ物理学者の、まさに度肝を抜くような、旋風を巻き起こすような、ときには歴史を覆すような発見の数々を、呑み込みやすい概念と言葉に置き換えて、聡明で好奇心の強い市井の人々にほんとうに理解してもらうこと――プロの科学者の世界と一般の人々の世界を橋でつなぐことだ。(p.340より引用)

  この考えのもと、難しい数式は一切なしで(数式は多少出てくる)、日常に潜む様々な物理学的現象から、ニュートンを筆頭とした偉大な物理学者の話、ブラックホールに至るまでをわかりやすい例を交えながら熱く語っています。

 

 この本を読もうと思うきっかけとなったのは、NHKでやっていた『MIT白熱教室』という番組。 

 今はもう再放送していないけど、ちょろっと観て面白かったのを覚えてます。

 この番組のなかで、著者のルーウィン教授が、身体を張って(割と命がけなのもある)実験を行う様子が印象的でした。

 まえは、MITでの講義の動画がホームページやiTunesUで閲覧可能だったのですが、現在は削除されている模様。残念。とても。

 でも、YouTubeには動画が残っているみたいですね。

 下の動画では、「モンキーハンティング*2」の実験や、鉄球を用いた力学的エネルギー保存則の実験の様子が紹介されてます。探せばけっこう残ってるんだとか。

 


Professor Walter Lewin, A New Physics Superstar

 

 そして、この本……なかなか読み応えのある一冊でした。

 後半の講では、天文学――X線天文学だったり、中性子星だったり、ブラックホールだったり、連星だったり――について、詳しく述べられていて、初めて見る言葉の羅列に終始圧倒されっぱなしでした。いやあ、宇宙ってすげえですなあ。

 

 締めに、教授は、「教える者にとって大切なのは、知識を箱にしまい込むことではなく、箱のふたを開くこと!」だと述べている。

 これは何も、教育者に限ったことではない。教えられる側にも、こういう意識が求められるのだと僕は思う。

 「知的好奇心」のふたを開いていかないと、驚きや発見はないし、狭い箱のなかで腐りきるのを待つだけになってしまう。

「高い塔を建ててみなければ、新しい水平線は見えない*3」のと一緒だ。

 

 この本を読んで、物理学の世界の美しさを、発見することの喜びを少しだけでも理解できたなら、それだけでも十分なんだろうと、僕は考えます。

  閉ざした者に、新たな水平線を見せるためにも、この一冊は重要な意味を持つでしょう!

 

 

 ……内容が濃いから再読しないとなあ。

 

*1:ちなみに、僕の通う高専(工業高等専門学校)の現在の英語名称は、「National Institute of Technology」――略称「NIT」で、MITと一字違いである。リスペクトなのかな……。以前は、「National College of Technology」で「NCT」だった。

*2:木にぶら下がっているサルを撃ち落とす話になぞらえた物理学の実験。発砲と同時に落ちるサルに銃弾をブチ当てるには、ハンターはサルをどう狙えばいいか? という問題。

*3:川口淳一郎氏(宇宙航空研究開発機構JAXA)の「はやぶさ」プロジェクトマネージャ)の言葉。僕のブログタイトルの由来にもなっている。